2.09.2007

自動車免許の再取得3

はじめて受けた模擬試験で思わぬ高得点(と言っても合格点ではないのだが)をマークした私は数日後、その間何も準備をしないまま再び営業所へ出向き、別の模擬試験を受けたところ、50点満点中の30点台という体たらくで、続けざまにまた別種の試験を受けても30点台という、散々な結果を残した。

やはり油断してはならなかった。実技はともかく筆記試験は、労さえ惜しまなければ合格するものである。無駄な時間と金銭の浪費を避けるべく私は次に模擬試験を受けるまでに教科書を3回読み通した。そしてまた数日後、空いた時間に営業所へ行き、模擬試験を2つ受けると、ようやく2つとも合格点を揃えることができ、教官のおじいさんから「もう免許試験場に行って本番を受けてもいいんじゃないかな」とのお墨付きをもらった。

既述の通り、私が通っている教習所は公認のものではなく、仮免の筆記・実技試験及び本免の筆記・実技試験は公安委員会が管轄する免許試験場で受験することになる。公認とか非公認というのも、公安委員会が公認する(しない)ということであり、そもそも公安委員会とは各自治体知事の所轄下に置かれた、警察を管理するための上部組織なのであるが、実際にその大きな役目の一つである運転免許交付業務は警察に委任されているため、我々が免許を取得する際に様々な場面で対峙する人物というのは結局警察官だということになる。

ある日の朝、私は現在、東京都民なので品川区にある鮫洲運転免許試験所というところに足を運んだ。鮫洲駅から試験場へ向かう道程には幾つもの行政書士事務所や免許試験予備校があり、その社員たちが朝早くから街頭に出て客引きをしていた。試験場の建物は想像外に古びたもので、外国人の比率が高いのには驚かされた。しかも、建物の二階にいる外国人がハイソサエティー風な外観であるのに比べ、私の受験会場である三階には、あまり裕福とはいえない格好の外国人たちがたむろしていた。その高い比率の割に、施設案内の外国語表記は極めて脆弱に見えた。

会場の指定された椅子に座って更に驚いたのは、受験者の数とその内訳であった。その日の午前、仮免の筆記試験を鮫洲で受けるのはたったの5人。2人は黒人で、2人はいかにも不良風な日本人、そして私。前面の黒板には「仮免5 内英語検定2」と書かれていた。どうやら黒人の2人は英語で表記された試験を受けるようだ。そのうちに試験監督が入場して、説明をはじめた。説明の一切は日本語で行われたのだが英語で受験する2人はそれを理解できたのだろうか?

試験がはじまり、私は時間内に回答を終え、会場の外に出て結果発表の時を待った。程なくして日本語で「結果を発表するから、受験者は会場に戻ってください」というアナウンスが流れ、私は"これでは英語圏の彼らには伝わらないだろうから知らせてあげよう"との機転を利かせてあたりを見回したが、彼らは見つからなかった。会場に戻っても彼らはいなかったが、そこで試験監督の警察官に「英語で受験した2人にも伝えてください」と忠告するような機転は、残念ながらその時の私には働かなかった。もし働いていたとしても、結果だけ見ればそれは徒労に終わっていただろう。なぜなら合格者は私だけだったからだ。

私は合格という結果にほっとしたものの、その日朝から眺めてきた光景の数々を思い浮かべて何やら複雑な思いを抱きながら、鮫洲の町を後にした。

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