12.18.2008

最終回

今クール、私にしては珍しいことに、毎週TVドラマを見ていた。「風のガーデン」というドラマである。倉本聰脚本、中井貴一主演のこの作品を初回の時点で見る気にさせたのは、やはり緒形拳の遺作となったからだ。

「北の国から」で有名な倉本氏の脚本は、今作も相変わらずのモノローグを中心に構成された家族愛を謳う内容であり、正直言って私の好みではない。脚本家としては同世代でよく比較されるであろう山田太一氏の、いつまでも現代社会の変わりゆく様相をウォッチし、風刺していく姿勢のほうがしっくりといくのであるが、それでもこの「風のガーデン」においては、モノローグはある程度物語の中心ではなく周辺に配置されたことによって抑制されたイメージを受けた。何より俳優陣の演技が圧倒的であった。中心人物たちだけではなく、脇役のガッツ石松氏なんかにも「上手いなあ」と感心させられたし、何人かの新人俳優には、その力量を伸ばすために存在するかのような、大変に長いセリフや長回しのワンカットなどが用意されていて、そういう配慮にも好感が持てた。そして、富良野の自然や花景色も実に美しかった。この辺はもう、地元である倉本氏の独壇場なのだろう。

そういうわけで、久々にTVドラマというものを堪能させてもらった2ヶ月強だったわけなのだが、見終えた今思うのは、フィクションをフィクションとして堪能しただけではなく、別の要素を同時に見続けていたのだなあという感想である。その別の要素とは、初回のオンエアを待つことなくガンによって亡くなった緒形氏が、その最新にして最後の姿を披露する場であったということだ。もちろん緒形氏と面識のない私は、亡くなる前にだって彼のことをTVでしか見たことがないし、報道によって亡くなったことを知った後すぐにこのドラマがはじまり、毎週演じているのを眺めているのは不思議な感覚で、故人だということをほとんど忘れていた。そして奇遇にもこのドラマは、ガンに侵された中井貴一(が演じる主役)が亡くなるまでを描いたものであり、中井氏が病に苦しむ演技や(役作りとして)痩せていく姿を通じて、本当にガンを患っている(がドラマの中では健康な)緒形氏の身を案じてしまうという、奇妙な相乗効果が生じていたのである。

そしてつい先ほど最終回が終わり、本当は10月に亡くなっている緒形氏が、ああ本当に亡くなったんだなあ・・という感慨にようやくふけることになった。合掌。

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