12.29.2007

パラメヒコ

今年も年甲斐もなく随分とサッカーやフットサルをプレイしたものだが、先週末の土曜にフットサル、そして日曜にサッカーの大会へ出場することでボールの蹴り納めとなった。しかしスパイク着用OKのサッカーに出場するのは数ヶ月ぶりのことで、ちょうど私は2足持っていたトレーニングシューズのうち1足を履き潰してしまっていたこともあり、せっかくだから久々に新しくスパイクでも購入しようかという気分になっていた。

土曜の早い時間にフットサルを終えた後、帰りがけにスポーツショップへと向かった。棚には数多くのシューズが陳列していて、その時点ではスパイクを買ってもいいかなと思いつつもトレーニングシューズでもいいやと、更に言えば金欠気味だし1足残ったシューズで明日の大会に臨んでもいいかなと、非常に優柔不断な態度で棚を眺めていたのだが、やがて一対の白いスパイクが目に留まった。

プーマのパラメヒコである。この靴は昔、私が中学や高校のサッカー部に所属していた頃には既に存在していたブランドで、当時カンガルー革製と謳うこのスパイクの性能と、耳慣れないスペイン語のネーミングには大いに惹かれていたものの、定価2万弱という価格設定に手を出せず、泣く泣く所有が叶わなかった青春の思い出詰まる一品なのだ。だが、なんとそこに置かれている白いパラメヒコには超特価と銘打たれ8000円台の値札が貼られていた。

「おーい」
私は、フットサル後もショッピングに付き合ってくれたMを呼んだ。
「これどう思う?」「おっ、パラメヒコじゃん。懐かしいなあ。」
どうやらMも青春の思い出を共有していたようだ。これが後押しとなり私は齢30を優に越えてからようやく、カンガルー革のパラメヒコホルダーとなったのだ。物を粗末に扱う悪癖のある私にしては珍しく、帰宅後すぐに取り出して丁寧に靴紐を通す。一穴通すごとに新品スパイクへの愛しさが募る。

あくる日、天気予報は雨だったがサッカー大会の時間には嘘のように空は晴れていた。平均年齢30台半ばの我がチームは、一回りは年齢が下と見られる他の参加チームを相手に決勝トーナメント進出を目指して戦いに挑んだ。が、あっという間に初戦を0-1で惜敗。
「あーもったいなかったなあ。今の相手が今日対戦する中で一番弱かったんじゃないの?」
なんていう声が仲間内で上がった。ということは、予選リーグの残り3試合を大差で敗北することになるのか・・別の仲間がこんなことを言った。
「(野球の)野村監督が、勝敗を決めるのは強弱ではなく、チャンスをものにするかどうかだと言ってましたよ!」
初戦は、良く守ったものの得点チャンスゼロだったんだけど・・

ともあれ、そんな檄が利いたのかどうか、2戦目の我々はディフェンスラインを高くして攻撃的に挑んだ。相手の攻めを守備の要・Hがカット。カウンター攻撃のチャンスである。そのまま中央でフリーの私に縦パスが渡り、前を向くと丁度、Sさんが後ろ向きながらもゴール前右寄りの位置でマークを外したところだった。私は迷わず右足を一閃する。インサイドで強く蹴ったボールは長い距離を滑ってSさんの足元へ。Sさんはそれをヒールで左にはたき、そこに飛び込んだMがゴールに流し込む、先制点だ。おおパラメヒコよ、おまえは早速美しい得点に絡んだぞ!

この試合は点の取り合いとなり、3-3の引き分けで終わったが、私は密かに"あの一蹴り"に満足してしまっていた。そしてこの後は、普段はサイドでのドリブル突破を無上の喜びとしているにも関わらず、"今日はパラメヒコでスルーパスを出す日"と勝手にテーマを決めてピッチ中央を王様の如くうろうろする時間が続いた。しかしあとの2試合は実力差があり過ぎて完敗。我々の大会はここで終わりを告げた。

1分け3敗という結果を残したが、それでも私は更に別の満足感を得ていた。ニュースパイクを着用しながらも、4戦を終えて靴づれができなかったのである。こんなことは今までになかったことで、さすがカンガルー革だと一人悦に入ってしまった。来年もパラメヒコと共に頑張ります。

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